「どうして覚醒(かくせい)剤のことを“シャブ”と言うか分かりますか」
東京地裁で26日に開かれた公判。覚せい剤取締法違反(所持、使用)の罪に問われた男性被告(45)と女性被告(43)にそれぞれ懲役1年6月、執行猶予3年の判決を言い渡した後、男性裁判官が証言台の前に立つ2人に問いかけた。
2人が黙ったままでいると、裁判官は穏やかながらもきっぱりとした口調で続けた。
「人生をしゃぶられてしまうからです。覚醒剤に人生を支配されてしまうんです。そういう人をいっぱい見てきました。(覚醒剤を)やめるには、よっぽど固い決意が必要なんですよ」
男性被告は今年3月31日、都内の路上に停車中の乗用車内にいるところを警察官から職務質問を受け、車内から微量の覚醒剤が見つかったため、同法違反の現行犯で逮捕された。その後の家宅捜索では自宅にあったポーチの中からも覚醒剤が見つかったほか、尿から陽性反応が出た同居人の女性被告も同法違反容疑で逮捕された。
公判の冒頭で、2人はそれぞれの起訴内容を認めた。
検察側の冒頭陳述などによると、2人が同居を始めたのは平成17年ごろから。ほぼ時を同じくして、「覚醒剤を使ってセックスをすると気持ちよくなるらしい」ということから、ともに覚醒剤を使用するようになったという。
月々の生活費約30万円のうち約10万円をあらかじめ「覚醒剤代」として決め、男性被告が密売人と連絡を取って購入。この方法で月に5回程度購入し、持ち帰った覚醒剤は2人分に分けて保管していたという。逮捕によって解雇されるまで、2人はそれぞれ首都圏の会社に勤務しており、表向きは通常の会社員と変わらない生活を送っていた。が、実際には頻繁に覚醒剤を使用していたようだ。
検察官「購入した薬物は何回に分けて使用していたのですか」
男性被告「1回買った分は1週間…。5回とか6回です」
検察官「ほぼ毎日使用しているということですか」
男性被告「はい」
検察官「(逮捕された)31日も出勤前に軽い気持ちで使っているようだが…」
男性被告「毎日といっても、毎月必ず5回(密売人から)購入するわけではないので、毎日というわけではありません」
検察官「違法薬物への感覚がまひしているのではないですか」
男性被告「そう言われればそうかもしれませんが…。でも、(覚醒剤を)やらない時期は3カ月とか半年とかやっていません」
「ほぼ毎日使用していた」という検察官の指摘に、男性被告は不満げに反論した。さらに、裁判官とのやりとりでも微妙なニュアンスの違いを強調した。
裁判官「昨年には芸能人も(薬物事件で)捕まっていましたが、(覚醒剤を)やめようとは思いませんでしたか」
男性被告「まさか捕まるとは思わなかったので…」
裁判官「捕まるから、やめるということなんですか」
男性被告「法的にも、生活の中にそういうものがあること自体良いことではないので、もうやめます」
裁判官「でもやめられなかったんですよね」
男性被告「やめられなかったというわけでは…。ちょっと感じが違う。やめなかったというのか…」
裁判官「覚醒剤をやめるために、これからどうするんですか」
男性被告「やめます」
裁判官「あなたはやめようと思ったらやめられるという認識みたいですが、そうじゃないんじゃないの?」
男性被告「やめます。大丈夫です」
この後、証言台に立った女性被告も「(逮捕時の)自分の写真を見たら病的で…もう手は出しません」と、男性被告とともに社会復帰を目指すことを誓った。
判決は執行猶予付きとなったが、言い渡し後に裁判官は「覚醒剤はあなた方が思っているほど甘いものではありません」と切り出し、冒頭の問いに続けた。最後は「もう二度と(裁判所に)来ないように」とクギを刺した裁判官。2人の心にこの言葉が届いていると願いたい。(滝口亜希)
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2人が黙ったままでいると、裁判官は穏やかながらもきっぱりとした口調で続けた。
「人生をしゃぶられてしまうからです。覚醒剤に人生を支配されてしまうんです。そういう人をいっぱい見てきました。(覚醒剤を)やめるには、よっぽど固い決意が必要なんですよ」
男性被告は今年3月31日、都内の路上に停車中の乗用車内にいるところを警察官から職務質問を受け、車内から微量の覚醒剤が見つかったため、同法違反の現行犯で逮捕された。その後の家宅捜索では自宅にあったポーチの中からも覚醒剤が見つかったほか、尿から陽性反応が出た同居人の女性被告も同法違反容疑で逮捕された。
公判の冒頭で、2人はそれぞれの起訴内容を認めた。
検察側の冒頭陳述などによると、2人が同居を始めたのは平成17年ごろから。ほぼ時を同じくして、「覚醒剤を使ってセックスをすると気持ちよくなるらしい」ということから、ともに覚醒剤を使用するようになったという。
月々の生活費約30万円のうち約10万円をあらかじめ「覚醒剤代」として決め、男性被告が密売人と連絡を取って購入。この方法で月に5回程度購入し、持ち帰った覚醒剤は2人分に分けて保管していたという。逮捕によって解雇されるまで、2人はそれぞれ首都圏の会社に勤務しており、表向きは通常の会社員と変わらない生活を送っていた。が、実際には頻繁に覚醒剤を使用していたようだ。
検察官「購入した薬物は何回に分けて使用していたのですか」
男性被告「1回買った分は1週間…。5回とか6回です」
検察官「ほぼ毎日使用しているということですか」
男性被告「はい」
検察官「(逮捕された)31日も出勤前に軽い気持ちで使っているようだが…」
男性被告「毎日といっても、毎月必ず5回(密売人から)購入するわけではないので、毎日というわけではありません」
検察官「違法薬物への感覚がまひしているのではないですか」
男性被告「そう言われればそうかもしれませんが…。でも、(覚醒剤を)やらない時期は3カ月とか半年とかやっていません」
「ほぼ毎日使用していた」という検察官の指摘に、男性被告は不満げに反論した。さらに、裁判官とのやりとりでも微妙なニュアンスの違いを強調した。
裁判官「昨年には芸能人も(薬物事件で)捕まっていましたが、(覚醒剤を)やめようとは思いませんでしたか」
男性被告「まさか捕まるとは思わなかったので…」
裁判官「捕まるから、やめるということなんですか」
男性被告「法的にも、生活の中にそういうものがあること自体良いことではないので、もうやめます」
裁判官「でもやめられなかったんですよね」
男性被告「やめられなかったというわけでは…。ちょっと感じが違う。やめなかったというのか…」
裁判官「覚醒剤をやめるために、これからどうするんですか」
男性被告「やめます」
裁判官「あなたはやめようと思ったらやめられるという認識みたいですが、そうじゃないんじゃないの?」
男性被告「やめます。大丈夫です」
この後、証言台に立った女性被告も「(逮捕時の)自分の写真を見たら病的で…もう手は出しません」と、男性被告とともに社会復帰を目指すことを誓った。
判決は執行猶予付きとなったが、言い渡し後に裁判官は「覚醒剤はあなた方が思っているほど甘いものではありません」と切り出し、冒頭の問いに続けた。最後は「もう二度と(裁判所に)来ないように」とクギを刺した裁判官。2人の心にこの言葉が届いていると願いたい。(滝口亜希)
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by 7ye7dxbrbk
| 2010-06-02 04:13